売上の35パーセントを占める取引先が、加工時間の45パーセントを使っていました

顧客別の売上と加工時間を並べると、一番大きい取引先が売上35%に対して加工時間45%を使っていた。人手不足で仕事を返すとき、どれを返すかを数字で選んだ記録です。

忙しいのに、利益が出ませんでした

仕事は忙しくてしょうがない。それなのに利益が出ない。どうしたらいいのか分かりませんでした。

うちが努力をしていないわけではありません。効率よく加工しようという工夫もしています。他社と比べて効率が悪いとも思っていません。それでも、やってもやっても利益が上がらない。

前回は、プレス機から取っている二つの信号、電源の入り切りとショットが、作業者の画面で何になるかを書きました。今回は同じ二つの信号を、経営側の画面で見た話です。

売上が一番大きい取引先には、一番手をつけられませんでした

売上が一番大きい取引先は、一番多く仕事をくれる取引先でもあります。

うちは人数の少ない工場ですが、それでも従業員を抱えています。やる仕事がないという状況を作らないことは、ぼくのとても大切な仕事です。もしそこの仕事が打ち切られたら、その穴をどう埋めるのか。

毎月まとまった売上があり、まとまった仕事がある。それは会社の運営に欠かせない一つでした。だから触りにくいのです。

それでも、この状態を長く続けて大丈夫なのかとは思っていました。

売上の円グラフと、加工時間の円グラフを並べた

稼働状況はずっと取っていたので、製品ごとの採算は前から分かっていました。分かっていなかったのは、会社全体で見たときにどうなっているかです。

経営者向けのダッシュボードで、期間を指定して顧客別の売上と、顧客別の加工時間を、同じ形の円グラフで横に並べました。

一番の取引先は、売上でおよそ35パーセント、加工時間でおよそ45パーセントでした。35パーセントの売上を出すために、45パーセントの時間を使っています。

顧客別の加工時間と売上を並べた二つの円グラフ。A社は加工時間45.2パーセントに対して売上35.5パーセント
経営者向けダッシュボードの画面。売上金額は掲載用に伏せています

数字の表で見ていたら、たぶん見過ごしていました。円グラフとツリーマップで並べたときに、うわ、と思いました。売上が一番多いのは確かだけれども、それ以上に時間を抱えている。これはまずい、と。

返さざるを得ない日が、先に来ました

本来なら、ここで単価の相談をするべきでした。相談をして、それでも条件が変わらないなら返す。それが筋だと思っています。現実には、それがなかなかできません。

先に来たのは人手不足でした。仕事が忙しくなりすぎて、納期が全然守れなくなってしまったのです。

お客さんに迷惑をかける前に、こちらから相談をしました。すいません、もう手が回りません。納期が遅れそうです。加工しきれないので助けてください、と。先方は、いいですよ、と言ってくれました。

それならこれをお返ししたいです。そういう形で仕事を返しました。

大事なのは、どの仕事を返すかでした

全部は受けられない。その状況が先にあって、では何を手放すのか。数字が決めたのは、返すか返さないかではなく、どれを返すかです。

稼働状況をずっと取っていたので、時間をものすごく使うのに全然売上が上がらない仕事、ショット数が少なくて単価も良くない仕事は、一目瞭然で分かっていました。うちを苦しめている仕事です。

それをお返ししたいと依頼したら、快く受け入れてくれました。単価が安すぎるということは、以前から先方へ直接伝えてあります。黙って切ったわけではありません。

返した仕事には、それなりの時間を取られていました。ざっと見て、労働時間のおよそ2割です。その2割で新しい仕事を取ってきたわけではありません。もともと抱えていた仕事へ、その2割が回っただけです。納期が遅れそうになっていたのは、そこの時間が足りていなかったからです。

どうなったか。忙しいのは変わりません。ただ、会社にお金が少しずつ残るようになりました。ものすごくびっくりしています。ただしこれは、決算の数字で検証した結果ではなく、経営していての実感です。労働時間の割合も、ぼくの概算です。

時間チャージという、一本の物差し

判断の材料にしているのは、時間チャージです。稼いだ金額を、労働時間で割ります。

この労働時間には、加工していた時間だけでなく、段取り、箱入れ、次の準備、機械が止まっていた時間まで全部を入れます。加工していない時間を分母から外すと、都合のいい数字しか出てきません。

一つのロットの工程別実績と、前回・前々回・TOP5平均との時間チャージ比較を並べた画面
ロット単位の時間チャージを過去と比べた画面。加工者名と金額は掲載用のダミーです

同じ物差しを、三つの単位に当てています。

  • 人ごと。その人の一日の労働時間全体と、その人が稼いだ金額

  • 仕事ごと。一つの製品で、関わった全工程の時間と、その売上

  • 客ごと。期間を決めて、顧客別の加工時間と売上

一番良かったのは客ごとでした。人ごとのツリーマップでは、会社への貢献が面積で見えます。同じ時間働いているように見えて、働いていない時間が多い場合もあります。ただしこれは、一人ひとりを評価するためではなく、全員を同じラインで見るために使っています。

今わかっている限界と、これから

経費をすべて含めた正確な利益計算には、まだ届いていません。時間チャージも、その手前の数字です。

それでも、機械から取っているのは電源の入り切りとショットの二つだけで、そこからここまで見えるというのは自分でも驚いています。

データを取ることが目的ではありません。取ったデータをどう可視化して、何を変えるかです。

よく、いい仕事も悪い仕事もあって、ひっくるめてトントンや、と言います。ぼくもそう思っていました。でも、それは本当に全体でプラスに動いているのでしょうか。

判定する材料は、会社全体の売上と、会社全体の加工時間を並べることです。うちの場合は、いい仕事を取ることよりも、悪い仕事をなくすことのほうが効きました。

ただし、なくす方法は返すことだけではありません。単価の相談をするのも一つです。作り方や段取りを工夫して、同じ数を短い時間で作れるようにするのも一つです。全部が値段の話ではなくて、こちら側の工夫で変えられる部分もあります。

どの手を選ぶにしても、その前に要るのは、どこが悪くて、何がネックになっているのかを見つけることです。その製品なのか、その取引先との条件なのか、それとも仕事の進め方なのか。そこを勘ではなくデータで決めること。いまのぼくは、そこが一番大事だと思っています。

実践・執筆M-LABO
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