工場の数字は、管理か、支援か、それとも監視か

普段は1時間600個の仕事が400個まで落ちている。最初にかける言葉は「200個少ないです」ではなく、「大丈夫ですか」。工場の数字を、評価の結論ではなく質問の入口にする記録です。

数字を、評価の結論ではなく質問の入口にする

工場では、ショット数、時間あたりのショット数(SPH)、非稼働時間をリアルタイムで見ています。これは管理なのか、支援なのか、それとも監視なのか。ぼく自身、まだ簡単には答えを出せません。数字は賞与や給与査定にも影響します。計算式で機械的に決めているわけではありませんが、普段の働き方を総合的に見るうえで、大きな指標の一つです。だから、監視の要素がまったくないとは言い切れません。

600と500では声をかけません

同じ仕事で、1時間に600個加工する人と500個加工する人がいても、それだけですぐに声をかけることはありません。人によって速さは違いますし、その日の体調や調子もあります。見るのは、他人との差より、その人自身の普段の数字です。普段600個の仕事が400個まで落ちている。1時間で200個違い、定時で終わるはずの仕事が残業になる。その水準まで落ちれば、現場へ行きます。最初に言うのは「200個少ないです」ではありません。「大丈夫ですか。何か問題がありますか」と聞きます。

残業が必要になれば、同じ仕事をゆっくり終えた人の支給額が、結果として増える場面もあります。それを放置することも公平とは言えません。ただし、小さな差まで絶えず指摘すれば、現場は息苦しくなります。だから、普段の数字から大きく落ちたときだけ確認します。

声をかけるだけでSPHが100上がることがあります

現場へ行き、声をかけるだけで、SPHが100ほど上がることがあります。気持ちが切り替わったのか、見られているから急がないと感じたのかは分かりません。従業員さん本人から、助かったとも、急かされて嫌だったとも聞けていません。ぼくは支援のつもりでも、相手が監視と感じている可能性は残ります。

だから「これは監視ではなく支援です」と、きれいに言い切ることはできません。経営者の意図と、働く人の受け取り方は別だからです。

一生懸命なのに、数字が悪いことがあります

数字が落ちているとき、手を抜いているとは限りません。見なくてよい場所を毎回確認している。必要のないものをきれいに並べている。誰も必要としていない作業を、一生懸命続けていることがあります。本人は真面目に仕事をしています。ただ、必要な品質や作業の終わりが、正しく伝わっていなかったのです。

仕事が終わったあとに数字だけ見ても、原因は分かりません。数字が落ちている最中に現場へ行くから、何に時間を使っているかを確認できます。その人だけの特殊な行動なら、口頭で伝えます。他の人も迷いそうな内容なら、ダッシュボードの注意事項へ残します。数字から現場へ行き、現場で見つけた問題を仕組みへ戻す。この流れまでできて、数字が作業改善に変わります。

悪い数字は、まず仕組みの問題として見る

ぼくは、数字が悪ければ、最初に仕事のやり方を疑います。段取り、材料や金型の位置、金型の付け方、設備、仕事を与える側、そもそもの単価。悪ければぼくが直しに行く。良ければ、その数字は従業員さんが頑張った結果だと考えます。

数字を人の評価の結論にすると、監視になります。数字を質問の入口にすると、管理や支援に近づきます。

そのために守っていることがあります。

  • 過去の平均時間あたりのショット数と比べる

  • 小さな差では介入しない

  • 大きく落ちたときは、人ではなく仕事のやり方を見る

  • 最初の言葉を「何か問題がありますか」にする

同じ400個でも、原因は一つではありません。体調が悪い日もあれば、材料が流れにくい、金型が付けにくい、確認点が多すぎる場合もあります。数字だけでは理由を決められないから、現場で話します。そこで初めて、声をかけて終わるのか、作業方法を変えるのか、設備を直すのかを判断できます。一日の終わりに結果だけを並べると、頑張りと無駄とトラブルが、同じ「遅い」に潰れてしまいます。原因がまだ現場に残っているときに見ることに、リアルタイムの意味があります。

答えは、まだ出ていません

以前、作業状況の棒グラフを画面上部から下へ移したとき、ある作業者から「見ていたのに」と言われました。その人にとっては、数字が頑張る目安になっていたのだと思います。ただ、全員が同じように感じているかは分かりません。

数字を見られることが励みになる人もいる。息苦しく感じる人もいる。ぼく自身、ショット数やSPHを給与査定の大きな材料として見ていますが、その使い方を従業員さんへ具体的に説明できているわけではありません。ここは課題として残っています。

それでも、数字を見ない状態には戻れません。異変を放置すれば、無駄な残業も、やりにくい仕事の仕組みも残ります。だから、数字が落ちたときに人を責めるのではなく、まず仕事を見る。「大丈夫ですか。何か問題がありますか」から始める。数字は答えではなく、現場へ行くための合図です。

実践・執筆M-LABO
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