プレス機から取る二つの信号が、会社の判断材料になるまで

プレス機から取る電源とショットの二つの信号へ、作業者と仕事の情報を重ねる。進捗、注意事項、ロットの記録、採算の材料までつながる仕組みと、現場で数字を見せる難しさの記録です。

プレス機から取っている信号は、二つだけです

一つは電源の入り切り。もう一つはショットです。ぼくの工場では、この二つからデータを集め始めました。

ただし、機械の信号だけでは、誰が何を作っているのかは分かりません。そこで作業者がダッシュボードから機械、仕事、自分の名前を選びます。そこから計測が始まり、仕事が終われば完了ボタンを押します。

機械の二つの信号へ、作業者と仕事の情報を重ねる。これが、うちの工場でデータを蓄積する最初の入口です。

もともとの目的は、「この仕事は本当に儲かっているのか」を知ることでした。誰が、いつ、何を、どれだけ作ったのか。それが分からなければ、売上だけ見ても仕事ごとの採算は判断できません。

データを取り始めると、採算以外にも使えることが増えていきました。

データを集めるだけでなく、現場へ返す

ダッシュボードには、予定数、現在の加工数、進捗率、一時間あたりのショット数を表示します。前工程で誰が何個加工したかも確認できます。

加工前に確認してほしい注意事項も表示します。箱入れの方法、箱へ入れる数量、以前の加工で気づいたこと。写真や記録は、次に同じ仕事をするときに見返せます。

今回の材料に傷があれば、そのロットへ写真を残します。後から見返したときに、どのロットで何に気づいたのかを遡る材料になります。

ダッシュボードは、数字を見るだけの画面ではありません。現場で生まれた情報を残し、次の作業へ返す場所でもあります。

棒グラフを、一番上から一番下へ動かした

この画面には、作業の状況を示す棒グラフもあります。最初は、作業者に自分の仕事を振り返ってもらいたくて、棒グラフを画面の一番上へ置いていました。注意事項や写真は、その下です。

使いながら、順番を変えました。これから加工する人にとっては、棒グラフより、注意事項や過去の写真の方が先に見るべき情報だと考えたからです。

注意事項を上へ移し、棒グラフを一番下へ動かしました。タブレットでは、スクロールしなければ見えない位置です。

すると、ある作業者から「棒グラフを見ていたのに」と言われました。その人は、ぼくが現場で見ていても、仕事の間が少ない人でした。棒グラフを見て、「今日はこれだけ働いた」と確認し、励みにしていたようです。

一方で、仕事の間が多いとぼくが感じている人は、棒グラフ自体をあまり見ていないようでした。これは数字で確かめた結果ではなく、ぼくが現場で見た範囲の感覚です。

この経験から、グラフを置くだけで、全員の意識が変わるわけではないと感じました。ただ、すでに自分の仕事を意識している人にとっては、頑張りを確認する材料になります。

ぼくが最初に期待していたのは、数字を見せれば、自分で仕事の進め方を振り返るようになることでした。しかし、数字を置くだけでは、見ない人には届きません。表示された数字が自分の仕事とつながって初めて、画面を見る理由になります。棒グラフの位置を変えたことで、その違いが見えました。

同じ画面でも、見る人と場面によって必要な情報が違います。作業前には注意事項や写真。作業中には進捗や一時間あたりの加工数。仕事を振り返るときには棒グラフ。

何を表示するかだけでなく、何を先に見せるかも、現場の設計です。

入口が使われなければ、データは残らない

この仕組みは、作業者がダッシュボードで仕事を設定するところから始まります。だから、入力が面倒で使われなければ、機械から信号を取れても、誰のどの仕事か分からないデータになります。

当初は、作業者へタブレットを渡しました。スマートフォンに近い操作なら使いやすいと考えたからです。しかし、現場で持ち歩くうちに落として壊れることがありました。現在は共用パソコンも入力端末として使っています。

高機能な端末を置けば解決するわけではありません。作業を止めずに入力できるか。注意事項を必要なときに見られるか。写真を残したいときに使えるか。データの入口は、現場で続けられる形でなければ意味がありません。

今も、作業者が迷わず使えるように画面と操作を直し続けています。集めたいデータを増やす前に、入力する人の負担を減らす。そこが一番難しいところです。

二つの信号が、会社を見る材料へ広がる

電源の入り切りとショット。そこへ作業者、製品、工程、開始と終了の時間を重ねると、誰が、いつ、何を、どれだけ作ったのかが残ります。

ショットが続いている時間と途切れている時間を見れば、加工だけでなく、段取りや箱入れ、機械が止まっている時間を考える材料にもなります。売上と作業時間を組み合わせれば、仕事の採算を見直す入口にもなります。

経費をすべて含めた正確な利益計算は、まだ完成していません。それでも、以前は感覚でしか分からなかったことを、現場の事実から考えられるようになりました。

ぼくは、最初から大量のデータを集める必要はないと考えています。大事なのは、機械から取れる小さな信号へ、現場の文脈を重ねることです。

二つの信号から始めたデータが、作業者の振り返り、次回の注意、ロットの記録、会社の判断材料へ広がっています。

今回は、作業者が使う現場側から、ダッシュボードの役割を書きました。次回は経営者の目線から、電源の入り切りとショットという二つの信号で、稼働、停止、加工の速さ、売上と時間の関係をどう読み解いているのかを書きます。

実践・執筆M-LABO
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