加工実績から「次にやる仕事」を出す仕組みを作った
お客さんから、口頭で「ちょっとこの仕事を急いで」と言われることがあります。3工程、4工程とある仕事でも、1工程目を始めると「もう取りかかったから大丈夫」と安心してしまう。そのまま仕掛かり品として置き、別の仕事を進めるうちに、急ぎだったことを忘れたことがありました。
気づいたときには、もう間に合わない。終わらせなければいけない仕事を残したまま、違う段取りを進めていました。金型を外してやり直すような大きな時間のロスはなくても、途中へ急な仕事を割り込ませれば、段取り通りに進めていた現場へ影響が出ます。
すべてのプレス機で、すべての工程を加工できるわけではありません。「この工程はこの機械」と決まっている仕事があります。納期と特急の情報を誰かが覚えているだけでは、仕事が増えるほど全体を把握しきれなくなりました。
Googleスプレッドシートは便利だった
これまでは、注文書を見ながら、ぼくがすべての注文をGoogleスプレッドシートへ入力していました。事務所で入力した内容を現場で見られる。納期順や会社順に並べ替えられる。GASを書けば、ボタン一つでGoogleカレンダーにも登録できる。ロット番号もそこで発行していました。
現場はスプレッドシートを納期順に並べ、「次はこれをやらないといけない」と判断していました。Googleスプレッドシート自体が不便だったわけではありません。
問題は、現場のダッシュボードとのつながり方でした。製品名を入力し、Googleスプレッドシートにある名前と完全一致したときに、注文とロット番号を見つけます。少しでも表記が違えば注文を見つけられず、別のロット番号を発行したこともありました。
文字を打つこと自体が負担になることもあります。製品名を正確に覚え、同じ表記で入力する。その条件が崩れると、注文の情報と現場の加工がうまくつながりませんでした。
注文をデータベースへ直接入れた
そこで、注文を自作のシステムからデータベースへ直接登録する形に変えました。1工程目は、登録済みの注文一覧から製品を選びます。2工程目以降は、現在加工中の一覧から、次に進める製品を選びます。
注文は常時およそ100件あります。全部を目で追うのではなく、会社別に絞り込み、品番の数字を4桁ほど入れて候補へたどり着けるようにしました。現場では、製品名を最初から最後まで入力するのではなく、登録済みの注文から選択できます。
ただし、現場で仕事の順番を決めているのは、今も段取りを担当する責任者です。新しいシステムが自動で生産計画を確定するわけではありません。責任者が「1工程目はこれ、その次は2工程目」と考えるときの材料を出します。
同じ納期でも、必要な日数は違う
納期順に並べるだけでは足りません。同じ9月10日納期でも、3日で終わる製品と、1週間かかる製品があれば、同じ日に知らせても間に合いません。
そこで、データベースに蓄積した加工時間とショット数から、5件の平均を使って工程ごとの所要時間を出しました。注文数に応じて、残り何時間かかるかを見積もります。
この時間には、段取りや検査は入っていません。現在は工程ごとに30分の余裕を加えていますが、この記事を書きながら改めて考えると、段取りと検査まで含めれば30分では足りないと気づきました。ここはこれから見直します。
全工程の推定時間を合計し、残業をしない前提と工場の稼働日を入れ、納期から着手期限を逆算します。通常品は、その期限が厳しい順に表示します。口頭で特急と言われた注文には印を付け、通常品より上へ出します。
画面では、納期だけでなく、全5工程なら現在は2工程目まで進んでいること、残りがおよそ何時間かも確認できます。前回使った機械、金型の場所、注文数など、すでにデータベースへある情報も一緒に取り出せます。
精密な計画を作ることが目的ではない
金型がトラブルを起こせば、それだけで予定が一日ずれることがあります。予定通りには、まず動きません。だから、分刻みの生産計画を作り、その通りに現場を動かそうとは考えていません。
今ある仕事の中から、急ぐものはどれか。次にやるなら、どの仕事か。大まかな順番を、現場の記録から出したかったのです。
運用を始めたばかりで、現場から具体的な意見は出ていません。画面が変われば「また変わったのか」という空気にもなります。入力が楽になったか、次の仕事で悩む場面が減るか、納期に合わせてスムーズに加工できるかは、これから確かめます。
ぼくは最初から、生産管理システムを作ろうとしたわけではありません。「今、この加工でいくらチャージが入っているのか」を知りたくて、現場の時間とショット数を取り始めました。
加工時間、製品、工程、単価、取引先の情報は、少しずつデータベースへ揃っていました。最後につながっていなかったのが、新しい注文と納期でした。
上から工場を管理するために作ったのではなく、現場で知りたいことを下から積み上げたら、生産管理までたどり着きました。