「どうしても守ってほしい」を、日本語だけで伝えるのは無理があると思った
「それなりに日本語を話せます」と聞いていた新入社員候補との面接で、込み入った話には通訳が必要だった。安全と品質で守ることを、30項目の日越対応HTMLにして、働き始めてから検証する準備の記録。
通訳が必要だった面接から、30項目のHTMLを作り始めた
来週から、ベトナム人の2人がうちの会社で働く。外国人を雇用するのは、うちでは初めてになる。
仲介者からは「それなりに日本語を話せます」と聞いていた。ところが実際に面接してみると、簡単な会話はできても、少し話が込み入ると通訳を介さなければ伝わらなかった。
プレス加工では、「たぶん分かったと思う」で済ませられない話がある。安全器の使い方、加工品が金型に残ったときの対応、良品と不良品の見分け方、数が合わないときの行動。仕事でどうしても守ってほしいことを、日本語だけで説明すること自体に無理があると感じた。
日本人同士でも、言いたいことが100%伝わるとは限らない
これは、ベトナム人だから起きる問題だけではない。日本人が日本人に日本語で説明しても、こちらの言いたいことが100%伝わらないことはある。
ぼくは関西でずっと仕事をしているので、説明するときには関西弁も出る。2人が覚えている日本語が標準語中心なら、同じ意味でも言葉の違いが壁になる可能性がある。これはまだぼくの想像で、実際にどこまで影響するかは分からない。
ただ、面接で通訳が必要になった事実を見て、ゆっくり日本語で話せば何とかなるとは考えないことにした。
ベトナム語版より先に、日本語版を作った
最初に作ったのは、ベトナム語の資料ではない。ぼく自身が内容を確認できる日本語のHTMLだった。
ぼくがこれまで現場で伝えてきたことを、日本語でずっと話した。それをAIに聞き取ってもらい、内容を整理しながらブラッシュアップした。AIにプレス加工の教育内容を考えてもらったのではない。ぼくの頭の中と口頭説明の中にあったものを、確認できる30項目にしたという方が近い。
HTMLには、仕事の基本姿勢、安全とプレス機、良品を見分ける品質知識、加工手順と異常管理、効率・記録・後片付けを入れた。
例えば、最初に伝える優先順位は「安全、品質、効率」。迷ったときの行動として、「分からない」「いつもと違う」「ミスをした」「数が合わない」「製品がない」の5つを置いた。数量管理では、100個のはずが99個だったとき、ほかのまとまりから1個を持ってきて数字だけ合わせてはいけない理由まで書いた。
文章を並べるだけではなく、「二度抜き」「バリ」「数量」「安全器」などの言葉から検索できる。同じ内容を後で伝えるときは、「数量管理をもう一度見て」と該当箇所のリンクを直接開けるようにした。
同じ場所を、日本語とベトナム語で開けるようにした
日本語版を確認したあと、同じ構成のベトナム語版を作った。金属プレス加工の専門用語は訳し方がずれる可能性を感じたので、AIにベトナム語の金属加工関係資料を読ませ、ぼくが挙げた言葉に必要そうな用語を加えて辞書も作った。
辞書を作る作業自体は、AIに頼むとすぐにできた。現在の日本語版とベトナム語版は、30項目とページ内リンクが対応し、日本語で「数量管理」を開いているときに、ベトナム語版でも同じ項目へ移れる。

ただし、ベトナム語として正確か、現場で本当に通じるかは、まだ確認できていない。ぼくが読めるのは日本語版までだからだ。今あるのは完成した教育方法ではなく、来週から試すための最初の形になる。
最初は動画、その後はHTMLへ戻る
30項目を最初から全部読んでも、頭には入りにくいと思っている。そこで最初は、日本語版の内容をGemini Notebookへ入れ、ベトナム語の動画にして見てもらう予定だ。
動画で全体を知ったあと、現場では同じ内容のHTMLへ戻る。工場にはノートパソコンがあり、本人たちもスマートフォンを持っている。リンクを渡しておけば、教える側と教わる側が必要な項目を同じ場所で確認できる。
一度の説明ですべて覚えてもらうのではなく、必要なときに何度でも戻れるようにする。それが、今準備している形になる。
答えが出るのは、2人が働き始めてから
写真はこれから撮る。動画もHTMLも、まだ本人たちには使ってもらっていない。翻訳が自然なのか、動画でどこまで理解できるのか、現場でスマートフォンを開いて見直せるのか。どれも結果は出ていない。
会話には、スマートフォンのChatGPT音声チャットも試したいと考えている。ぼくの日本語をベトナム語の音声にし、相手のベトナム語を日本語にする。日本語を話さなければ、日本語は上達しにくいとは思う。でも、うちは日本語学校ではない。安全や品質など重要な場面では、日本語の練習より、まず正しく意思を通わせる方法を選びたい。
資料を作ったことで、準備が終わったとは思っていない。伝わらなかった言葉、迷った操作、現場で開かれなかった項目を、働き始めてから一つずつ直していく。
ぼくが今作ったのは、完成した答えではない。言いたいことが一度で伝わらない前提で、何度でも確認し直せる入口だ。