ぼくの仕事は、大仕事より小さな雑用で埋まっていく

Excelで転記、複製、端数計算を担っていた現品表作成をWebアプリへ移した。本人が使う入力画面と端数を含むPDFプレビューから、AI化の前に仕事のルールを形にする判断を記録します。

AIへ仕事を渡す前に、仕事を小さく分ける

600個の製品を、30個ずつ箱へ入れて出荷する。必要になる現品表は20枚です。

現品表には、品名、数量、会社名、ロット番号などを書きます。納品するときは一つの製品だけではありません。複数の製品について、それぞれ必要な枚数を作らなければいけません。

この現品表を、これまではぼくがExcelで作っていました。誰が作ってもよい作業です。ただ、事務所でパソコンを触っていたのがぼくだったので、自然とぼくの仕事になっていました。

難しくない。ただ、面倒だった

品名はGoogleスプレッドシートか納品書ソフトからコピーし、ロット番号や数量は手で入力します。よく使う製品には簡単な雛形を作り、一つ入力すれば同じ内容が並ぶようにしていました。

一つの製品だけなら、それほど大変ではありません。しかし複数の製品をA4やA3へ並べると、途中で品名も数量も変わります。そこから先のセルを直し、必要枚数を数えて、印刷の配置を考えます。

一つひとつは大した作業ではありません。難しいこともない。ただ、面倒でした。

ぼくの仕事は、こういう小さな雑用で少しずつ埋まっていきます。大きな経営判断だけで一日が終わるわけではありません。納品書を書き、見積書を書き、図面や工程表を印刷し、現場の稼働状況を確認する。その間に、現品表も作ります。

それなら、製品と数量を入れるだけで、一気に現品表を作れないか。そう考えて、Webアプリを作りました。

現品表印刷システムの入力画面
現品表印刷システムの入力画面。製品名、備考、数量、入数、端数指定はすべてサンプルデータです。

612個を入れると、100が6枚と12が1枚

最初に、品番の一部から製品を選びます。製品マスターから製品名を取り出し、総数量と一箱へ入れる数量を入力します。アプリは、必要な現品表の枚数を自動で計算します。

総数量が612個で、一箱100個なら、通常は次のように作ります。

  • 品番の一部から製品を選択

  • 総数量の612を入力

  • 箱の入数100を入力

端数の12には下線が入り、通常の箱と見分けられるようにしました。

現品表のPDFプレビュー
現品表のPDFプレビュー。端数の12個と58個に下線が入る。掲載した製品名、備考、日付はサンプルデータです。

ただし、自社の仕事は割り算だけでは終わりません。製品によっては、612個のうち112個を一箱へ入れることがあります。その場合は端数箱の欄へ112と入力し、数量100を5枚、数量112を1枚に変えます。

112個ある製品を、100個と12個の二箱へ分けるのか、112個を一箱へ入れるのか。製品によって許される入れ方も違います。単純な計算に見えても、実際の会社にはローカルルールがあります。

必要な記載も会社によって違います。備考欄へ必要な内容を入力し、現品表へ載せられるようにしました。枚数に応じてA3かA4のPDFを作ります。

品名が長い製品もあります。ハイフンや空白の位置で折り返し、二行になっても入る範囲で文字を大きく表示します。こうした小さな例外も、実際に使うためには必要でした。

アプリの中では、PythonでPDFを作り、データベースから製品名を取っています。高度で派手な仕組みではありません。価値が低い仕事ではなく、ぼくがやり続ける必要のない仕事を、仕組みへ移しただけです。

紙を切る仕事は、まだ残っている

全部を自動化できたわけではありません。アプリが作るのは、印刷するためのデータまでです。

印刷した紙から現品表を切り離し、箱の中へ差し込むか、外側へ貼る。この物理的な作業は人が行います。今のところ、それもぼくがやっています。

現時点でアプリを使っているのは、まだぼくだけです。事務員や従業員へ渡した効果は、まだ分かりません。

ぼく自身は、かなり楽になったと感じています。今確認できている変化は、それだけです。

AIの事務員を入れる前に

最近は、AIの事務員やAIで会社を回すという話をよく見ます。ぼくも、将来はAIを使って会社の業務を効率化したいと考えています。しかし、この現品表アプリをAIが動かしているわけではありません。外部から呼び出すAPIもまだ作っていません。

頑張れば、現品表作成をAIのSkillとして作ることもできるのかもしれません。それでも、何の仕組みもない状態で、AIへ毎回すべての仕様を説明し、ゼロから現品表を作らせるのは難しいと思っています。

製品をどう選ぶか。総数量と箱の入数から何枚作るか。端数を一箱へまとめてもよい製品はどれか。どの会社では材料ロットが必要か。長い品名をどこで折り返すか。

AIへ仕事を頼む前に、その仕事の入力、判断のルール、例外、出力を決めておく必要があります。

先にWebアプリとして仕事の形を作っておけば、将来APIを用意したとき、AIから「この製品の現品表を、この数量と入数で作って」という自然言語での依頼へつなげやすくなる。今はそう考えています。

ぼくには雑用が多いです。それを一度に全部なくす方法は、まだ分かりません。だからぼくは、現品表のような小さな仕事を一個ずつ仕組みへ移しています。

AIで会社を回す準備は、AIを入れるところからではなく、ぼくの雑用を一つ切り出すところから始まる。現品表アプリは、その最初の一個です。

実践・執筆M-LABO
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