RFIDタグ1,000枚に番号を彫った。でも金型には一枚も付けなかった
1から順に番号を彫った約1,000枚のタグが、今も箱のまま残っています。金型へ一枚も付けなかった理由は、読み取り機だけではありませんでした。
消したかったのは画面ではなく、迷う入力だった
ユニクロのセルフレジでは、商品を置くだけで会計できます。Suicaは、改札でタッチするだけです。RFIDやNFCには、入力をしなくても物と情報を結び付けられる魅力があります。これを見て、ぼくは自社の金型にも使えると思いました。
自社工場には約1,200個の金型があります。金型へタグを付け、機械に付けたリーダーへかざす。続けて作業者のタグをかざせば、タブレットを開かなくても、金型、加工内容、担当者をまとめて設定できる。金型台にもリーダーを置けば、片付けるときに保管場所を記録でき、次に使うときも探せます。頭の中では、かなり便利な仕組みでした。
そこで、リング型のRFIDタグを約1,000枚買いました。自社のレーザーマーカーを使い、タグを管理するための通し番号を1から順に入れました。約1,000枚へ番号を彫りましたが、金型には一枚も取り付けていません。読み取り試験にも進みませんでした。
タグを動かすのか、リーダーを動かすのか
最初はシール型のタグを金型へ貼ろうと考えました。しかし、金型へ貼るとタグを動かせません。リーダーを金型の場所まで持っていく必要があります。

次に考えたのが、ゴムのリングが付いたタグです。金型のガイドポストへ取り付け、タグだけを動かしてリーダーへかざす。以前紹介したM5StickCとRFID 2ユニットを各機械へ置けば、加工を始める場所で読み取れます。
ところが、当時UIFlowで組んでいた読み取り機は安定していませんでした。現場へ入れて、毎日使える状態ではないと感じました。ソニー製のリーダーは安定していると感じましたが、価格が高く、基板がむき出しのためケースも考える必要がありました。
一部だけ便利にしても、仕事全体は楽にならなかった
読み取り機だけが理由ではありません。自社には、一つの金型を複数の製品や工程で使う共用金型があります。一つの金型へ3個、4個とタグを付けるのか。タグを読んだ後、結局タブレットを開いて加工内容を選び直すのか。完了時には、別の操作も必要です。
RFIDをかざした後に、同じ仕事を特定するためタブレットでも選ぶ。その流れが、中途半端でブサイクに見えました。
画面を見なくて済むこと自体も、正解ではありませんでした。加工前に見てほしい写真や注意事項があります。4工程目を始めるなら、1工程目、2工程目、3工程目で何個加工したかも確認してほしい。現在の進捗率や、何時ごろ終わるかという予測も画面に出しています。
ぼくが減らしたかったのは画面ではなく、作業者が迷う入力でした。画面には、入力する役割だけでなく、仕事を判断するための情報を見せる役割があります。
金型へ付け続けられるのか
物理的な取り付けにも不安が残りました。リング型タグをガイドポストへ付けても、金型の出し入れや運搬中になくなるかもしれません。タグやリングが割れる可能性もあります。油のある環境で、長期間うまく使い続けられるかも分かりませんでした。
これは実際に金型へ取り付けて起きた事故ではありません。取り付ける前に現場での使われ方を考え、起きそうだと判断したリスクです。やめた理由は一つではなく、次の四つを合わせた判断でした。
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読み取り機が、現場で毎日使える安定性に届いていなかった
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共用金型では、一つの金型に何枚もタグが必要になる
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タグを読んでも、結局は画面で仕事を選び直すことになる
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油と出し入れのある場所で、付け続けられるか分からなかった
RFIDをやめず、付ける単位を変える
RFIDそのものを諦めたわけではありません。今考えているのは、金型ではなく標準工程表へタグを付ける方法です。
標準工程表は、一つのロットと一緒に各工程を移動し、加工が終わるまで付いて回ります。一つの注文、一つのロットに対してタグを一枚発行する。標準工程表のタグを読み、何工程目かを選び、作業者のタグを読む。加工が終わったら、M5StickCのボタンを押す。この流れなら、共用金型にも対応できます。
紙にはロット番号が残ります。RFIDとロット番号をデータベースで紐付ければ、タグが読めなくなってもロット番号から情報を確認し、新しいタグへ付け替えられます。タグだけを唯一の手掛かりにしない設計です。
ただし、この方式はまだ実装していません。現在は先に、新規注文をGoogleスプレッドシートへ入力する方式から、注文を直接データベースへ登録して生産へつなぐ方式へ変更しています。その土台が完成してから、ロットとRFIDを結び付ける計画です。
約1,000枚のタグは、今も工場に保管しています。無駄になったとは思っていません。金型には合いませんでしたが、ロット管理や棚卸しなど、別の使い方は考えられます。
便利な技術を先に置くのではなく、現場で管理したい仕事の単位を先に決める。金型ではなくロットだと気づくまでに、約1,000枚のタグへ番号を入れました。