急に動かなくなった機械。回路図をAIに読んでもらいました

多軸タップが急に止まった。紙の回路図をスキャンしてAIに読ませ、次に測る場所を順に聞きながらテスターで確かめた。原因は0.1秒を待つ小さなタイマーの接触で、抜き差しと接点復活剤で動いた。

「ランプは点くのに、回らない」と書いた記事のカバー画像

回路図を読み解けなくても、AIが読んで、次に見る場所を教えてくれた

うちの工場の機械が、急に動かなくなりました。多軸タップという、金属の部品にネジ穴を何か所も一度に作る機械です。ボタンを押すと、部品を載せた台が下から上がり、何本ものタップが回ってネジ穴を作り、逆に回って抜けて、台が下がります。

ところが、ボタンを押すと台は上がるのに、タップを回すモーターが回りません。手で一つずつ操作するモードに切り替えても、やはり回りません。一度は動いたのに、また止まりました。

どこで止まっているのかが分からない

最初は、機械のあちこちに付いている、位置を知らせるスイッチの調子が悪いのだろうと考えました。周りをずっと見ていきましたが、悪いところは見つからず、どれもしっかり動いているように見えました。テスターも当てました。

機械には、安全のための決まりがたくさん組み込まれています。たとえば、モーターの「前に回る」と「逆に回る」が同時に入らないようにする仕組みです。いくつもの条件がそろったときだけ動くので、止まったときに「どの条件が欠けたのか」を探すのは大変です。電気の通り道を記号で描いた地図、つまり回路図を、逆からたどっていくことになります。根気のいる作業です。

紙の回路図を、AIに渡した

そこで、紙の回路図をスキャナーで読み込み、Claude Opus 5.5に渡しました。最初に聞いたのは「まず理解できますか」です。返ってきたのは、この機械がどの順番で動くのかの整理で、ぼくの説明と合っていました。図面の書き間違いらしい箇所まで見つけてきました。

次に、症状を伝えました。前に回すボタンを押すと、モーターのブレーキは外れる。でも、モーターは回らない。このモーターは、止まるときにブレーキがかかります。回すときは先にブレーキを外し、ほんの0.1秒あとにモーターを回します。その「0.1秒待つ」役をしているのが、小さなタイマーです。

AIの最初の答えは、ブレーキが外れるなら、途中までは電気が来ている。故障はその先にあるというものでした。そのうえで怪しい順に候補を並べ、一番目に挙げたのが、そのタイマーでした。

寄り道しながら、タイマーへ戻った

一発で決まったわけではありません。AIが「次はここを測ってください」と場所と手順を返し、ぼくがテスターを当てて数字を伝える。その往復を、その日の午後と翌日の朝に続けました。

機械の部品には、図面とは違う名前が付いていました。写真では番号が見にくいので、写真に自分で番号を書き込んで渡しました。AIはそれを図面と照らし合わせ、一度は別の部品を疑いました。測るとそこは正常で、線をたどると、やはりタイマーにつながっていました。測る場所がずれていたらしく、おかしな数字が出て迷った場面もあります。

最後に残った事実は、次の4つです。

  • ブレーキは外れる。途中までは電気が来ている

  • タイマーのランプは点く。タイマーは0.1秒を数え終えている

  • モーターを動かす部品には、電気が届いていない

  • タイマーにつながる線は、入る側も出る側も切れていない

ランプは点くのに、タイマーから先へ電気が出ていない。これで、原因はタイマーだと絞れました。AIは、タイマーを外した写真を見て「差し込む足に黒ずみが見える」と返してきました。実物の足は黒ずんではいませんでしたが、少し酸化しているような感じはありました。タイマーを抜いて差し直し、金属の接触をよくする接点復活剤を塗って戻すと、モーターが回りました。

抜き差しで直ったので、原因はタイマーの足と差し込み口の接触不良だったと考えています。ただ、タイマーの中が傷んでいる可能性も消えていません。とりあえずこのまま使い、同じタイマーを注文しました。

途中には、電気を流したまま測る作業もありました。感電の危険がある作業です。AIも、線に触るときは必ずブレーカーを切ること、慣れていなければ経験者に立ち会ってもらうことを、繰り返し書いてきました。

AIに相談していなければ、業者さんに修理を頼んでいたかもしれません。それが、手元のテスターと回路図とAIで直せました。

1年前は、読めなかった

1年ほど前、機械を動かすプログラムの図(ラダー図)をAIに読ませたことがあります。全然読めていなくて、やっぱり無理なのかと思った記憶があります。今回読ませたのは、電気の通り道を描いた回路図です。回路は、決まりが分かれば順番に筋道をたどれるもので、プログラムと似ています。もしかしたら、AIが得意な分野なのかもしれません。今なら、ラダー図も読めるのかもしれないと思っています。

AIにできることは、日々増えています。増えるなら、使う人間の側もアップデートしないといけません。1年前にできなかったことも、「これはAIにやらせたらいいんじゃないか」ともう一度試してみる。その思考パターンを持つことが、すごく大事だと感じました。

回路図を自分で読み解けなくても、読むのはAIに任せられます。人は、言われた場所を確かめて、見たことを伝える。今回、一番助かったのは、答えより先に、次に何を確かめればいいかを順番に並べてくれたことでした。困ったら、自分の頭を整理するためだけでも、まずAIに相談する。止まった機械の前で、ぼくはそれが一番早い道だと腹に落ちました。

実践・執筆M-LABO
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